ゆるく推す

いのちだいじに

僕のヒーローアカデミア The Ultra Stage:2.5次元の未来は明るい

ヒロステ観てきました。最高でした。なんというか、世界が変わった。素晴らしかった。自分は勝手に2.5次元に上限をつけていたんだと、ここまでしかできないだろうと思っていたことに気付かされました。

もちろん推しくんは1ミリも関係ないので記事を書くか迷ったのですが、観劇したてのこの気持ちを一生忘れたくないなと思ったので、書きます。

細かい演出についても言及するので、演出バレやストーリーバレします。これから観劇される方はぜひ、これは読まずにご自分の目で新鮮に楽しんで頂きたいです。

  

 

 

ヒロアカと私

ヒロアカは、最初から好きだったわけではなく、少しずつ好きになった作品です。

連載1周年くらいの頃にいちど読んで、王道ジャンプ漫画でありながら急に冷たい包丁を突きつけられるような作風が怖くて、また第一印象で爆豪くんが好きになったのですがこの子が自分を曲げて成長するような姿は見たくないなと思い、その時は読むのをやめてしまいました。

その後しばらく経ち、20巻まで出た頃にTSUTAYAで何か20冊借りようと思って丁度の冊数だったのでまた最初から読み返して、あの頃私が感じた冷たさは、序盤の出久(子供)視点の世界で垣間見る大人視点の世界であり、堀越先生はそこまで描き切るつもりでいるんだなと、冷たさを楽しむことが出来るようになりました。

また、懸念した爆豪くんの矯正ですが、二人ともオールマイトに憧れたが、出久が憧れたのは救ける姿で爆豪が憧れたのは勝つ姿というように、出久と爆豪のゴールが全く同じである必要はないんだと描かれていて、こちらも安心して読み進めることができました。

そんなヒロアカが舞台化するということで、元々ヒロアカ好きの友人に誘われてチケット戦争をくぐり抜け、無事観劇してまいりました。そしていま、ヒロアカ全巻が手元にあります。読み返したいと思いつつ、記憶の中にあるヒロステを書き記してからでないと原作に上書きされてしまう!という本末転倒な思考のもと、感想を書いていきます。

 

偏差値3の感想

もうね~マジよかったんすよ、「爆豪くんが爆豪くんだったらそれで満足〜」くらいの気持ちで行ったけど、爆豪くんがまず5億点で、その上全キャストが良くて、脚本も演出も音楽も良くて、終わった時の感想「世界が平和になった」

なんだろう、改めて2.5次元の良さを教えてくれたというか、マジで最初から最後までずっと100点満点だからトータル5兆点なんですよね???
個人的にハイステ初演ぶりの衝撃でして、ヒロアカの舞台化は無理でしょって思ってたけど、完全に覆されました。これまでの2.5次元の歴史すら感じる、ほんとにいいとこ取りの舞台だった!!最初から最後まで楽しかった!!緩急があった!!見たい所はじっくり見れて、あったら嬉しいなって所も見せてくれる、マジで完璧だった!!見れて良かった!!!

なんかもう、観劇後ポジティブな感情しか湧いてこないんですよね…これを演じきったキャストありがとう、うまく構成した脚本ありがとう、分かりやすい演出ありがとう、素敵な音楽と照明ありがとう、リアルな衣裳とその予算つけたネルケありがとう、堀越先生ありがとう、ジャンプありがとう、この時代に産んでくれた親ありがとう!!!!!!!!

こう、最近繁忙期なのもあって日々ストレスが溜まっていたんですが、ヒロステ観たら全てが吹っ飛んだ…楽しかった…ポジティブになれた、いいものを観た、観れて良かった本当に。 久し振りに、純粋に観劇を楽しむことが出来たような感覚で…メチャメチャ楽しかったし、1回しか見れないのが悲しいけど、生で見られてほんとに良かった、円盤買います。

 

具体的な感想

これじゃさすがにあんまりなので、もうちょっと掘り下げて書きます。

超かけ足なのに満足度が高い理由

ストーリーは最初から体育祭が終わるまでを休憩含む2時間25分でやるので、かなりのスピードでした。かっちゃんとデクの中学時代、ヘドロ事件、オールマイトに認められるまでを10分でこなす力技。

めちゃくちゃ展開早いんですけど、ストーリーの根幹をなす大事な所はじっくり見せてくれて、これ見たいけどカットかな?っていうのも軽く見せてくれて、*1マジで文句のつけようがない。

そう、ストーリーの根幹は個人的に「かっちゃんとデクの関係性」と「互いに触発しあって成長していく生徒たち」だと思っていて、ここがきちんと描かれていたから私にとって満足度が高いのです。体育祭はかなりカットされていましたが、一番大事な連鎖反応(次で述べます)はしっかり描かれており、他の試合も出久の歌の背景ではありますがサイレントでどの試合かわかるように見せてくれました。*2

かけ足だからこそ分かりやすくなった点

また、かけ足になってエピソードがそぎ落とされたことにより分かりやすくなるという現象もありました。*3

先ほど連鎖反応と言いましたが、1-Aが触発しあっているのが分かりやすくなっていて、騎馬戦に誘った出久に飯田くんが友達だからこそ戦いたいと固辞する→それを見ていたお茶子がトーナメントで爆豪と戦う前、アドバイスしようとした出久に自分の力で頑張りたいと断る→そんなお茶子の全力の戦いぶりを見た出久が、半分の力で戦おうとする轟を怒るの、全てが理解できるし、頑張れ有精卵たち…って微笑ましい気持ちになります。*4

ちなみに、轟くんがこの後対戦相手になる爆豪くんに話しかけておきながら、出久の話ばっかりするから爆豪くんが爆ギレするのも3次元だとより納得性が高くて面白かったです。

プロジェクションマッピングは添え物、それでいい

あとあれだ、プロジェクションマッピングもいっぱいあったんですが、あくまで添え物で、役者の芝居を引き立てるツールに徹していたのも良かったです。ヒロステで何に感動したかというと俳優の声であり体であり行動で、何でもマッピングで済ませるのが嫌いだから、ほんとに嬉しかった。

超能力もの*52.5次元は限界があるなぁなんて思っていたひとつの要因が、このプロジェクションマッピングが主役になりがちという点だったんですが、超能力ものだろうと部活ものだろうと、私たちの心を動かすのは超能力そのものではなく、言葉や行動なんですよね。だから、そこをきちんと理解して演出してもらえると*6こんなに良いものが出来上がるんだと、本当に感激しました。正直諦めかけていたので。*7

オールマイトの演出の妙

今回、オールマイトはマッスルフォームとトゥルーフォームを違う役者が演じています。

キャスト発表時には、なるほどな~まぁ特撮の役者とガワみたいに煙幕で入れ替わったりできるもんなと思ったのですが、「1人を2人で演じる」というよりは「オールマイトの状態が2パターンある」という演出。

USJの佳境、死柄木と対峙するオールマイトはマッスルフォームを保っているけどあと一歩でも動けばトゥルーフォームを晒してしまうピンチというところで、2人を並んで立たせていたのには舌を巻きました。みんなはマッスルフォームを見て「オールマイトがいるなら大丈夫」と思っているけど、出久だけはトゥルーフォームを見ており、窮地に気付いていて、助けに入るのです。

 時にはゆったり入れ替わることで笑いを誘ったりと、舞台ならではの演出だな~と思いました。

最初から最後までずっと好き

オタクの語彙力のない褒め言葉って感じなんですが、私にとってこれこそ新鮮でした。どんな舞台を観たとしても、眠くなる瞬間や、「ここは気を抜いていいかな」という瞬間があるものです。そして観劇後の感想として、「このシーンが好きだった」「わかる、あと私はここも好き」と語りあうのです。

しかしヒロステは、驚くべきことに「最初から最後までずっと好き」でした。超かけ足で大事なシーンのつなぎ合わせだからということもあるのでしょうが、うまいこと音や照明で視線誘導されていて、舞台上がワイワイしてても本筋が分かりやすく、置いていかれることもなく、中弛みもない。個人的に「ここは舞台映えしないだろうな…」というあたり*8に歌とダンスが組み込まれていたのも大きい。

なんてことをぐるぐる考えると行き着くのは、何よりも「原作が面白いから」なんですよね。舞台を観て改めてヒロアカの構成の巧みさ、面白さに気づくことが出来る、これぞ2.5次元の正の連鎖だよなぁ~と、久しぶりに感じることができました。

キャラの根っこを捕まえたキャストたち

そしてまた、演出の方が「俳優を見てください」と言い切ったように、キャストがみんなキャラを全うしていて、歌って踊るけどきちんとキャラを守っていて、生身だからこそキャラの気持ちがダイレクトに感じられて、超かけ足のストーリーなんだけど説得力があるのは間違いなくキャストの力でした。

うまく言えないのですが、キャラの根っこ?精神性?大事だと思っていること?を捕まえているからなのか、セリフがキャラのものとしてスッと入ってくるんですよね。出久の切実な願い、お茶子の悔しさ、爆豪くんの自省、轟の戸惑い、全てがまっすぐに届いてくれる。

もちろんそれだけの理解をして演じるキャストは2.5次元でたくさんいますが、ヒロステは「全員良かった」というのがすごく驚きました。私の経験上は、たいていキャストの中でこの人とこの人とこの人が良かった…という感じだったんですが、今回は本当に全員が良くて、何のストレスもなくて、マジでびっくりです。

そしてまた、超かけ足ゆえに笑いどころとシリアスと泣きどころを反復横とびする感じなのですが、置いて行かれることなく笑って集中して泣いて…を繰り返すことができました。これも、キャストの力が大きいと思います。演技でわかりやすく切り替えさせてくれました。

そして何より…オールマイト!彼が彼でなければヒロアカの世界観が崩壊すると案じていたのですが、もう…完璧でした。オールマイトがすべての始まりであり指針であるから、オールマイトに説得力がないと成り立たない舞台だったと思いますが、強さも優しさも天然で憎めない所も全て良かった。肉襦袢も丁寧に作られていて、着ぐるみ感は薄かったです。*9

爆豪くんに5億点!!!!

唐突に偏差値3に戻ったかと思いきや、私は冷静です。冷静に、熟慮に熟慮を重ねた結果、爆豪くんに5億点です。

爆豪くんモンペなので、爆豪くん80点ならもう満足としようなんて思ってたんですけど、完全なる私の大好きな爆豪くんで、小林くん本当にすごい。爆豪くんをただの不良ではなく、大切な構成要素をきちんと拾い上げてくれていた。*10

爆豪くんは基本怒鳴ってますが、怒鳴り声で怒ってるのか悔しがってるのか悲しんでるのか自分を鼓舞してるのかちゃんと分かるの凄かったです。

対人戦闘訓練の後に自省して意思表明するところ、後ろ姿で顔は見えなかったけど声でどんな顔してるのか分かって、こちらも凄かった。

あと細かいけどクソナードの言い方が良かったです、「クソナァド!」じゃなくて「クソヌァーード↓↓」それから「んだテメ何の用だ死ねカス」も良かった。

演出上、ガンガン踊るんですが、もちろん爆豪くんが踊るとこなんて見たことないんですが、すごくしっくり来るんですよね…不思議。小林くん本当にすごい。(2回目)

それから、アクシデントだったのでアドリブだと思うんですが、体育祭表彰式でオールマイトが爆豪くんにメダルかけるとき、鼻にかけた後口にかけて終わるじゃないですか?その後メダルが取りにくい所に落ちてしまってオールマイトが自ら拾ってまた爆豪くんにかけたんです。そして上鳴と切島くんが拘束されてる爆豪をハケさせるんですが、爆豪が切島に「テメエが拾えや💢💢」って言ってて、(オールマイトに拾わせてんじゃねえよ)という心情が見えて、ほんとに感心しました

爆豪くんの話が続くんですが、舞台上で男子組が制服から体操着に着替えるシーン、爆豪くんが着替え終わりに靴のつま先を床にトントンして履いてて、あ〜爆豪くんは「ちゃんとトントンしなさい」って光己さんに躾けられて育ったんだ…ってモンペは爆泣きしました。

あと最後にこれだけ言わせて下さい、舞台なので前方席でもない限り、汗は見えないじゃないですか、でもカテコ挨拶終わりにキャストが分かれてハケるとき、照明で逆光でシルエットしか見えなかったんですが、ノシノシ歩く爆豪くんの顎から汗が一雫落ちたの、きれいでした、本当に…。

まとめ

つまるところ、何となく「2.5次元ってこういうもの」と自分の中に思い込みがあって、「だからここまでやってくれれば満足」というハードルを持っていて、それを超えるどころかぶち壊されて、感激しましたという話でした。

私がここまで感激したのは、「マンガやアニメを舞台でやる意味は、生身の人間が演じることでキャラの心情がダイレクトに伝わることだ」と考えている私にとって、「俳優を観てください」と言い切る方の演出とキャストの演技が突き刺さったからです。2.5次元に何を求めるかによって、舞台に対する評価は簡単に変わりますので、この点はご承知おきください。*11

途中でも書きましたが、劇場に行くまでは「繁忙期しんどい…」とか「来週から16連勤やんけ…」と暗い気持ちでいたところが、ヒロステを観た後には完全に忘れられたこと、ポジティブな感情でいっぱいになったこと、忘れたくない思い出です。

ヨッシャ、書ききったから原作読み返すぞー!!!

 

 

*1:個人的に見たかったオールマイトの「久しぶり!お茶しない?」と「お弁当一緒食べよ?」があって笑いました

*2:必殺技だけはマイクオフだけど叫んでいて、マイクオフだから逆にリアルに聞こえた。マイクオフの「レシプロバースト!」と「スタングレネード!」最高です

*3:過去にはKステのロスモワで猿比古の「気分悪くないから聞いてやる」の意味が小説ではわからなかったけどステで一瞬でわかった

*4:轟くん今回のステはガンギマリ状態のみだったので、今後ステが続くならポヤポヤした轟くんが観れるかなぁ~観たいなぁ

*5:ヒロアカでは「個性」ですが

*6:パンフレットで演出の方が「俳優を観てもらいたい」と言い切っていた

*7:とある2.5次元でマンガのモノローグをマッピングでやられて、そこに俳優がいるのに演じさせないのかって本当にショックだった

*8:入試前の特訓とか障害物競走とか

*9:役者の岩永さん自身がすごく鍛えているのもある

*10:畏怖と虚勢、自信とプライド、冷静であり未熟、素直で天邪鬼など

*11:ヒロアカなのに歌とダンスとか、敵連合が全体的に低予算とかで引く人がいるのも分かります。私はこの辺は気になりませんでした。