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いのちだいじに

Disgoonieワークショップ公演「邯鄲の夢」B

西田さんが毎年演劇ワークショップをやってそのメンバーで公演をやっているというのは知っていたのですが、今年初めて観に行きました。

失礼ながら、発表会という感じなんだろうな~と舐めてかかっていたので、完全に裏切られました。純粋に、ひとつの舞台として面白かったです。

disgoonie.jp

3作あるうち「邯鄲の夢」を観てきましたので、その感想です。

 

 

あらすじ

大学生のユウトは、友人たちと文化祭の準備をしている最中に、不思議な少女に呼び止められる。少女は自分の名前は「ダレカ」だと言い、ゲームをしようと持ちかけてくる。その内容は、別の世界に行き、姿かたちの変わった「ダレカ」を見つけられればユウトの勝ちで元の世界に戻ってこれるというもの。

ユウトはゲームの参加を決め、とある世界に飛ばされる。そこで出会ったのは、国王の圧政に苦しみ国を変えようとしているレジスタンスたちと、それに賛同する大臣と王子だった。

誰が「ダレカ」なのか分からないまま、ユウトはレジスタンスのリーダーに祭り上げられ、いつしか現実よりも仲間たちとの日々を大切に考えるようになっていき、この世界で最初に出会った少女ミキに心惹かれていく。

そんなユウトの前に再び現れた「ダレカ」は言う。「君が探しているダレカは、君の現実の世界にあるもの。この世界にはないよ。とっても大事なもの、忘れてない?」

この世界は何なのか、ユウトの大事なものとは何か、大事なものを見つけたユウトの決断はーーー?

 サイト見たんですが、あらすじがなかったので適当に書きました。素人が書くとこうなる。

見てのとおり、ストーリーはよくある感じかと思うんですが、要所要所が決定的に省かれていて、最後どうなるのかが分からないのが面白かった。思い返してみると王道だなって思うんですけど、こんなに面白くなるんだ!って。

 

感想

邯鄲の夢というと、栄枯盛衰の故事成語?のイメージなんですが、この作品では「長いようで実際は短い夢」という意味。こんな感じのセリフがありました。

楽しい夢は、また必ずすぐ観られる。つらい夢は、二度と観ない。

そう考えると、気が楽になりませんか?

これは夢だと思って、挑戦しませんか?

実際には、つらい夢を何度も見たり、夢の続きが観たくても観られなかったりするわけですが、ステキな言葉だなぁと思いました。そして結局、ユウトにとってこの邯鄲の夢は「二度と観られない楽しい夢」だったわけなんですが…。

 

ユウトに「ダレカ」を探させた張本人は、ユウトには忘れられている。それでもユウトに前を向いてほしくて、邯鄲の夢を見させた。この、ユウトが真相に気付くあたりの脚本演出が良かったです。決して決定的な説明セリフはないのですが、ユウトと相手の表情、雰囲気で察することが出来る。あぁ、彼らはきっとこうだったんだと。そういう、観客に最後の1ピースを想像させる余白が心地よかった。*1

 

あとは、西田さんの描く女性って何でこんなに強いんだろ~!芯があって、強くて、自立している。そういう女性が西田さんの周りに沢山いたのか、西田さんの理想の女性がそうなのか分かりませんが…。少年漫画における、主人公と一緒に戦うタイプのヒロインって感じ。

 

それから、ストーリー自体はシリアスですが、笑いがちょいちょい挟まれて、ゲラの私は大変でした。*2まずギター持ってる女の子2人組の名前がノブとフッキーの時点でアウトでしょ。劇中1回も名前呼ばないから、終演後に配役見て笑っちゃったよ。

 

演者について

主人公のユウト。物語が進むうちに、彼は一体どうするんだろうか、幸せになれるんだろうかと感情移入してしまいました。また、真面目なようで唐突にボケるから笑っていいのか悩んだ。私は好きですそういう笑い。*3

ミキ。まずめちゃくちゃカワイイ。暴力ヒロインになりそうなところ踏みとどまっていたのは、彼女のどこか上品な雰囲気からかな。ツッコミもキレがあってよかったです。もらい泣きもしました。

ダレカ&大臣。背が小さくてかわいらしいのに劇場を支配する雰囲気があって、この役なことに納得。笑顔がステキだけど役的にあまり笑うところはなかったのが残念。

王子。無二のキャラクター性を持っている。国を憂いレジスタンスに肩入れする王子、ある意味ストーリーに都合のよい存在なんですが、ちょうどよいウザさが悲壮感を消していた。

(元)リーダー。もふ虎副音声のせいでデニーロにしか見えない。主人公が予言の人物としてあっさりリーダーになる都合のよさを、「今のリーダーがリーダーに向いてない」と強引に笑いで納得させてしまう力量。ツボすぎて、出てくるたびに笑ってしまった。

エリ。影のリーダーのような存在で、テキパキと物事を進めていて、でも愛嬌もあって…という理想の女上司。でも(元)リーダーとくっつくのも分かる。こういう女性がだめんずウォーカーになる。

マリ。キリッとしているエリと対照的にニコニコしている、女性像の対比が良かった。そんなマリもユウトの奇行を「気持ち悪いわね^^」と切り捨てる。女性はニコニコしている裏で何を思っているのでしょう…

ノブ&フッキー。出てきたと思ったらギターで弾き語りを始めて、しかもクオリティがめちゃくちゃ低い。ズルイ。笑うしかないやん。最終的に弾き語り始める前にギターをコンコン叩くだけで笑ってしまった。

グンジ。ポッと出のユウトがリーダーになることに反発するが…というおいしい役。イケメン。なんだかんだで一番の常識人だったのでは?

エルドラド。グンジの兄で預言者。メガネ3つかけて出てきて、話しながらユウトに1つずつ渡して、「メガネ返せ」と言う理不尽の擬人化。

 

演者というかキャラの感想になってしまいました。

観ていて思ったのは、9ヶ月のワークショップを経ているのでチームワークが良いということと、今この瞬間を楽しんでいるということ。自分で、選んで、板の上に立っているんだということ。商業演劇を見ていて、まれに「何でこの人板の上に立っているの?」と思ってしまうことがありますが…やりたいことをやっている人の輝きを浴びた気持ちです。

 

脚本演出について

セットはとてもシンプルで、下手と中央と上手に出る場所があり、積み木のような木の箱をシーンによって組み替えるだけでさまざまな場所を表現していました。

衣装はユウトはチェックシャツにジーンズといういかにも大学生で、別世界の住人たちは白が基調。

流れる音楽は歌詞つきなのですが、シーンを追うためあまり聞いてなかった…。何か仕掛けがあったのかもしれませんね。

全体的に西田カラーを感じて、演出家の個性ってこういうことなんだなぁと思いました。言語化できなくてスミマセン。

オリジナル作品なのに、登場キャラひとりひとり印象に残るところがあって、だから演者についてでも全員に言及することが出来たのですが、これってとてもすごいことだと思うんです。原作ありならともかく、初めましてのキャラなのに、最後には全員に愛着が沸きました。

 

当日券あります

普段いろんな舞台を観ているなかで、1万円払って大きな劇場にステキな演者なのに観たあと何も残らなかったり時間の無駄だったと思うこともあります。今日は3千円払って150人くらいの劇場で演者をひとりも知らないのに、心に残るセリフやシーンが沢山あった。

もともと私自身が西田さんの作風が好きなんでしょうが、ほんとに観て良かったなと思いました。

読んで興味を持たれた方、西田さんの作風が好きな方は是非ごらんになって頂きたい。11/22まで、新宿シアターモリエールです。

*1:とか言って、聞き逃しただけだったらどうしよう。

*2:大変っていうか我慢せずに笑っちゃった

*3:推しくんもそういうとこある