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いのちだいじに

~崩壊シリーズ~『派』:何も残らないという価値

や〜、面白かった〜!!!小難しくいろいろ考察する舞台が好きな私ですが、こんなに考えることのない舞台があるとは!!!(褒めてます)改めて、コメディは頭が良くないと作れないんだなと思いました。

 

 

 

事前にトークライブがありました

「派」はシリーズ3作目なのですが、開幕前に1作目を今回のキャストと観るライブがあり、行ってきました。

いやもう…めちゃくちゃ面白くて…笑いすぎてヒーヒー言いながら舞台(映像)観たの初めてですよ!*1一緒に観てるキャスト陣の茶々入れも面白いし、極め付けが終盤の録画失敗してて、今回も出る大水さんが途中から別人になってるっていう。そんなんありかよ!!

映像で観ても大爆笑で、自分が好きなタイプの笑いだったので、期待値が爆上がりの反面、コメディ初挑戦の安西くんはここに飛び込んで行けるのか…?と不安も感じていました。(杞憂でしたが)

トークライブのレポートはこちら↓

www.plusa-theater.com

 

 

あらすじ

www.houkai-st.com

 イントロダクションを引用しようと思ったんですが、稽古と並行して台本を作るそうで、ところどころ実際観たものと違っていたので、やめときます。

やましげさん演じる座長が舞台監督の奥さんとケンカして、この舞台がダメだったら劇団を解散すると約束させられて、その覚悟で臨むけどムチャクチャになっちゃって…ということさえ分かっていればOKです。あとは観ながら頭に入ってきます。

あとはいつもどおり、好きなポイントなど書いていきます。

 

失敗しまくる気持ち良さ

この舞台はほとんどが劇中劇で、それがまぁ〜失敗しまくる。そもそも沢山セリフのある役者が怪我で出られなくなる時点でヤバいんですが、ピンスポ当たらない、SE間違える、音が途切れる、セリフ忘れる、小物が落ちる、出とちる、カンペすら忘れる、役名読み間違える、セットが壊れる、などなど…考えうる失敗全てやらかされて、逆に気持ち良い!!

失敗が失敗を呼んだり、失敗が逆に良かったり、連鎖して取り返しのつかないことになったり…ひとつひとつも面白いんですが、大局的にそのひとつひとつが重要なパーツ(伏線)であったりと、本当に緻密に練られた失敗交響曲でした。

 

ぶつかり合い続ける個性

やたら芝居がかった芝居をする奴、それに引っ張られる奴、棒読みの奴、テンパる奴、クセの強い芝居をする奴、役に全然入ってない奴、相手のセリフも全部言っちゃう奴…劇中劇の演じ方も人それぞれでそれもまた面白い。それぞれの個性がぶつかり合い、全く融合することなくぶつかり続けていく。化学反応というよりドッヂボールなんですよね。

それでもこの作品が成立するのは、主演のやましげさんのフットワークあってこそ。基本的には無茶苦茶な劇団員たちにツッコみ、どうにかフォローしていくのですが、時には彼自身も役を離れて面白がって観客に「いやお前だけはちゃんとしろよ!」と心の中でツッコませる、絶妙なバランス感覚。

こんなにぶつかり合ったまま進むのは初めて観たので、興味深かったです。

 

何も残らないという価値

この舞台を主演のやましげさんは「何も得るものがない」「下には下がいると思える」と評し、安西くんは「手ぶらで来て手ぶらで帰れる究極のエンタメ」と言いました。

2人ともたぶん同じことを言っていて、観終わった自分も同感なんですが、「何も残らない」ことに価値がある舞台だなと思いました。

私が普段舞台を観るときは、

・告知やチラシから舞台背景や原作、パロディ元などを読み取る

・必要そうなら予習をする

・(以下、観ながら)人間関係を頭に入れる

・セリフや表情の裏を読む

・脚本に散りばめられた伏線とその回収を探す

・対比構造を見つけて整理する

・多重構造を見つけて整理する

・起承転結でいうと今どこなのか考える

・比喩があれば何を示すのか推測する

・流れている音楽の意味を考える

などなど…書き出しただけて疲れてしまったんですが、こういうことを観ながら無意識にやっています。正直疲れます。そこまでして舞台に込められたメッセージを理解し、何か持ち帰るものを見つけて初めて、「良い舞台を観た」と思えるのです。

でもこの舞台は、上記のことを意識することなく、ただ舞台上で起こっていることを観ているだけで楽しくて、苦しくなるほど笑って、「あー楽しかった」と帰路に着く。ビックリするほど何も残らないし、だからこそ何も考えずに楽しめました。

 

観客に何も考えさせない凄さ

この舞台を観ながら、「この舞台とお笑いのコントと、何が違うんだろう?どちらも面白いけど、同じではない気がする」と思いました。

今思い返しながら思うのは、「キャラクターの行動の正当性」かな?舞台は1〜2時間あり、コントは大体5〜15分であることから、コントはより瞬発的に笑いを取るため、キャラクターが突拍子もない行動を取り、他のキャラクターがツッコんで笑いが生まれる。この舞台は、各キャラクターの置かれた状況や背景を見せる時間的余裕があるので、突拍子もない行動ではなく本人にとっては正当な行動を取っているんですが、それが場に噛み合わないゆえに笑いが生まれる。

ここまで書いて、「シチュエーションコントでも同じことが言えるけど、それと何が違うんだろう?」と思いました。

う〜ん何だろう、シチュエーションコントって、メインが「認識のズレ」(例えば、Aの話をしているのに相手はBの話と思って聞いているから話が食い違うとか)にあると思うんですが、この舞台の笑いはそれとも違うんですよね…認識のズレによる笑いも出てくるんですが、根本はそこではなくて…認識のズレの笑いは、観客が観ながらこのズレ何だろう?と考えながら観て、そのズレが分かった瞬間から笑いに変わるんですが、この舞台は観ながらその辺を考える必要も無かった。

この「観客に何も考えさせないのに笑わせられる」のって凄いと思うんです。

こと演劇においては、キャラクターが少しでも不思議な(違和感のある)動きをすると、何か意味があるのかなって考えちゃうじゃないですか。で、それが無意味だと「今の動き何だったんだ」ってなっちゃうし、何かに繋がっていても「不自然だな」と思ってしまう。

何も考えずに済んだのは、キャラクターの一挙手一投足に整合性があるから。キャラクターの背景や性格からそうするだろうな、という行動しか取っていないのに、それがぶつかり合うと笑いに変わっている。

あ〜〜言語化出来ない!!とにかくすごい不思議体験でした。

 

安西くんについて

前述のとおりドキドキしていたんですが、ちゃんと舞台のパーツになっていてもう全くの杞憂でした。キャラクター的にはある意味都合の良い役回りなんですが、行動に一貫性があるので、そうだよな、お前はそうするよな…と納得できる。

ネタバレ考慮してあんまりこのシーンが…とか言えないんですが、いつもながら本当にそこにそのキャラクターがいるかのような演技で…ああーっそんな恥ずかしい思いをーっとか、ああーっ間違えないでーっとか、ちゃんとやれーとか思ってしまうような(笑)ほんとにダメな奴って感じが良かったです。(ゆうて良い子なんですけどね)

主演でバリバリやってるのを観るのも好きなんですが、こうして脇役で任された仕事をしている姿を観るのも良きですね。なんかちょっと、アルカディアとかロズギルとかを思い出しました。*2

あと本番の軍服姿もカッコいいけど、本番前のチャラい格好も可愛かった!!!

 

東京公演11/4まで、その後地方公演あります

ほんとに自分的に新体験でして、前述のとおり考察厨なのでコメディ舞台にはあまりハマらないかなと思っていたんですが、覆されました。いろんな方にフラッと行って笑ってきてほしいなと思います。

東京公演が11/4まであるのと、その後大阪、仙台、富山、金沢、名古屋、福岡がありますので、ぜひ日程覗いてみてください↓

www.houkai-st.com

 

次行ったときにTシャツ買わねば…(推し舞台のTシャツが寝巻き)(今日は野球のTシャツ来て寝ます)

marshmallow-qa.com

*1:滝口炎上のときにたっきーがさと兄とヴァイオリンで情熱大陸弾いたのもヒーヒー笑いながら観たけど、あれはお芝居ではないのでノーカウント

*2:それらより出番は多かったですが、パッと出て仕事してサッとはけるという意味で