ゆるく推す

いのちだいじに

絢爛とか爛漫とか:虚構と現実のはざまで

本日*1初日を迎えた推しくんの主演舞台がめ~~~~っちゃ良くて、沢山の方に見ていただきたいので、ダイマしに来ました!!明日も仕事だ眠い!!!でも書く!!!!

詳細には触れないつもりですが、自分的に刺さったところなど書きますので、話の大筋と多少のネタバレ演出バレあります。

 

 

 

あらすじ

kenran.westage.jp

処女作以降、2作目が書けず悩む新人小説家・古賀(安西慎太郎)の部屋に集う批評家志望のモダンボーイ・泉(鈴木勝大)、自称・耽美小説家の加藤(川原一馬)、非凡な才能を持ち、破天荒で自由に生きる諸岡(加治将樹)。移り変わる季節のようにゆれうごく夢と才能、理想と現実の葛藤の中で、友情や恋にもがきながら、それぞれの道を探していく。

あらすじとかコメントとか | 舞台「絢爛とか爛漫とか」

観終わった今このあらすじ読むと、まさにこのとおりだな~と思っており、特に「夢と才能、理想と現実の葛藤」というのがこの物語の背骨だなぁと思います。

「なんであの子より私の方が頑張ってるのに、あの子の方が上手く出来るの」とか、「なんで私には才能がないんだろう」とか、誰でも一度は感じたことがあると思いますし、そんな感情を普通に描くとネガティブで暗い物語になりがちだと思うんですが、丁寧に丁寧に描くとこんなにも清涼感のある物語にできるんだなと、大変驚きました。

以下雑然と、良かったポイントを書き連ねてゆきます。

 

ざっくりとした感想

私がめーーーっちゃ好きなやつ!!!(知るか)

演者4人とも上手いからノンストレスで、演出も奇をてらわず演技が引き立てられており、小道具も部屋の中なのにうつろう四季を感じさせてくれて、音楽も(ない時も含めて)効果的で、何より脚本が面白い!!!26年間いろんな形で再演され続けるの大納得だし、なんなら100年経っても上演されると思うくらい普遍的な人間賛歌だと思いました。*2

4人のストレートだし会話劇かなと思っていたら思いのほか動きが激しかったし*3笑ったり泣いたり心が苦しくなったり褒めてあげたくなったり…観劇しているだけなのに自分の色んな感情が引き出されます。

会場も狭いので(青山DDDシアター)4人と同じ部屋にいるかのようで、板の上が賑やかなら楽しくなるし、張り詰めていたら緊張しました。

 

4人しかいないのに

古賀の天才に憧れ妬む気持ち、

諸岡の豪放磊落の天才でありながら凡庸に憧れる気持ち、

加藤の優しさと歪んだ性癖と自己嫌悪、

泉の流行り物を追い斜に構える一方で一途な人を羨む気持ち。

4人にありとあらゆる人間の感情が詰め込まれているのに、それぞれが一個人として成立していて、更にタイプ全然違う4人なのに自然な友人関係。

ひとえに脚本の巧みさと、演技の説得力だと思いました。

 

理想と現実のバランス

ほんとに、このお芝居における理想と現実のバランスが良かったです。

理想的なものばかりだと「現実はこんなに甘くないんだよな…」と冷めるし、現実的なものばかりだと「フィクションでくらい夢を見たい」と思ってしまうけれど、どちらも感じなかった。本当に、心地よく2時間が過ぎていきました。

推しくん演じる古賀は、他人の良い所ばかりが目に付いて、妬むのはカッコ悪いと分かっているから格好をつけるけど、追い詰められて隠した妬みを子供のように口にしてしまう小ささがある。

裏返せば子供のように純粋に一途に、自分の愛する文学に愛されたいと願っており、他の人からするとその一途さこそが才能なのだけど、本人は他人のことばかり気にしているから、自分のその才能には気付かない。

3人それぞれと衝突して、多分その時にも(おそらくは最後まで)自分の才能には気付かないんだけど、最後には報われる。

この「報われ方」が、何か一つの言葉とか出来事をキッカケにしてではなく、苦しみもがいていた期間にもらった言葉だったり、友人の姿だったり、あとは時の経過もあるんだろうな…そんな積み重ねや自然の流れでというのが、とても良かったです。人の救われ方として、リアルだし同時に小説的だった。

個々のキャラ造形もそうなんですが、全体的に「そうだよね」と「そうだといいよね」の塩梅が秀逸でした。

 

四季を感じるセットのささやかな転換

舞台上は古賀の部屋の1室のみなんですが、季節が変わるごとに縁側の向こうの庭や部屋の中に置いてあるものも変わっていき、やっぱり日本の四季って素晴らしい文化だなぁと思いました。(作文)

このお芝居では、春夏秋冬の1年間で4人それぞれが成長…成長とは違うか。自分の道を見つけていく姿が描かれておりまして、ひとつひとつの季節ごとに起承転結があり、またお芝居全体としても大きな起承転結になっている。ともすれば時系列が分かりにくくなりそうなところ、「四季」で自然に場面(というか時間)転換がなされるので、大変わかりやすかったです。

桜の花びら、風鈴の音、蚊取り線香のにおい、金魚売りの声、ススキと月、舞い散る雪。

厳しい冬で終わるのもまた良きでした。

 

推しくんについて

まーーーー最高でしたよ!?!?!?!?

天才に憧れる凡人で、妬みを曝け出す愚かさとそれを恥じる慎ましさがあり、他人の所為にしてしまいたいと思いながらもそう出来ず、自分の体内を濁流のように巡る黒い心と戦い、最後には救われる……文字通り、全身全霊で古賀を演じる推しくん、ハァ………好き。

大いにイライラさせられるんですけど、気がつけばいとおしくなっている。

古賀本人は気付いていないけれど、4人は不思議と古賀を中心に回っていて、他の3人が愛でる古賀の人間性。聖人君子でも悪のカリスマでもなく何ならみっともない部類の人間なのにどこか愛したくなる人間性は、もちろん脚本演出あってのことですが、間違いなく推しくんの演技力で出来ていました。

もふ虎とか、SSSとか、野球とか、これまでも推しくんは「天才に憧れる凡人」が上手いな~と思っていましたが、本作はもうホントその真骨頂を観た気持ちです。

凡人が上手い推しくんマジ天才だな(???)

 

まとめ

本作は、創作活動をしたことのある人には間違いなく刺さりますし、「何で自分には才能が無いんだろう」って思ったことある人にも刺さりますし、「親の期待に応えたい」と思った人にも刺さりますし、他人を妬んだことのある人に刺さります。つまり全人類に刺さります。(クソみてえな語彙力)*4

9/13までの1か月近く上演で、平日ソワレも19時からなので、もし当ブログをお読み頂き少しでも気になることがあれば、フラッと行ってみてください!!

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*1:もう昨日か…

*2:私の中で人間賛歌といえばジョジョなんですが、ジョジョが前向きな人間の賛歌だとすると、絢爛は後ろ向きな人間の賛歌というか…後ろ向きすぎて前向きというか…

*3:開始3分で推しくんぶん投げられて笑った

*4:もちろんエンターテイメントである異常好き嫌いというのは存在すると思いますが、そう言わずにいられないほどなのです。